
「母親」というのは無意識のうちに子供を支配する。もちろん父親も支配するが、子供と一緒にいる時間が長い母親の方が子供にとってはその影響が大きいケースが多い。
例えば、あなたはこんな状況に身を置かれた事はないだろうか?
・母親が情緒不安定で、今まで怒られなかった事で突然怒られる。
・忙しくてイライラしている母親に感情的に当たられる。
・母親の態度が兄弟姉妹と自分とで差がある。
・自分に興味がない(話を聞いてくれない、聞いててもつまらなそう、自分が何をしても喜ばない等)
・家事がすごく大変そうで母親の態度が冷たい。
こういった状況に直面した時、あなたはどんな気持ちになるだろうか。もちろん、母親が働いている場合など、家事や育児を同時にこなすことは体力的にも精神的にもとても大変なことではある。でも、子供の時はその大変さが分からない。
分からないから、単純にこう思うのではないだろうか。
「お母さんは私のことが嫌いなんだ。」

一度そのように思うと、その後の母親の行動に説得力が加わり、想いはどんどん強くなる。子供にとって母親は絶対的な存在であり、母親も未熟な人間の1人だなどと思う余地はない。思い描くのは、いつも笑顔で自分を優しく抱きしめてくれる理想的な母親像であり、時間にも気持ちにも余裕の無い楽しくなさそうな母親の姿ではない。
そして更に、「母親が楽しくなさそうなのは、自分のせいだ。自分が出来の悪い子だからだ。」
なんて思いはじめるのではないか。子供には詳しい親の状況が理解できない。だからこうなると、家庭内で起こる様々な出来事を自分のせいだ、と自分を責めるようになってしまう。
思春期になって、「うるせー!くそばばぁ!」などと分かりやすく反抗できれば健全な精神を育てていける可能性もあるが、「いい子」になる事で自分を隠し、母親の味方となる事を生き抜く方法に選んだ場合はどうだろう?
しかも本人は自分が生き抜くために、本来の自分という存在を封じて、母親が望む都合のいい自分を演じている事に気づいていない場合が多い。そして母親の側は自分に都合良く振舞ってくれる子供を「いい子」と思うわけである。つまり共依存関係だ。
こうなってしまうと、子供は外の世界に出ても人の顔色をうかがい、母親の時と同じように相手に都合良く振る舞うようになる。相手が自分を受け入れてくれないと不安になり、相手の機嫌を損ねないようにどんどん自分を犠牲にする。

人生の目的が人に嫌われない事、無価値な自分の価値を上げる事、になってしまうと、必要以上に頑張ったり、無理して笑ったり、相手がどう思っているのかを気にしすぎたりしがちだ。
当然、自分がどうしたいのか、何がやりたいのか、下手したら何を食べたいのか、まで分からなくなってしまう。みんながやっている事を真似て、流行りの服を着て、友達が食べているのと同じものを食べる…。
あなたはそんな風に無理を重ねていないだろうか。もし自分がすごく楽しいと感じているのならば、問題はない。でも行動が不安から起きている場合は要注意。
そもそも、自分の価値基準が母親の顔色だったのだ。いや、それは大人になったからといって、過去形にできるものでもない。今も続いているかも知れない。その形はあらゆる人との関係構築の雛形となって、本人が気づいて行動に移さない限り、そう簡単に変わるものではない。
自分の母親が支配者だった場合、子供にとっての影響はこのように甚大である。大袈裟でなく子供の人生を台無しにしかねないのだ。
何をやっても心から楽しめない、自分の幸せが何なのか分からない、頑張らないと自分には価値がない、などと感じている人は一度、冷静に自分と母親との関係を分析してみることをお勧めする。
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